回想録 小学生編11

 はじめに

気分が落ち込むと、声も出にくくなるな

 


トランプと大富豪

トランプはお好きだろうか?友達がいようといまいと、誰もが楽しいゲームを見いだせる素晴らしい発明だ。お一人様なら自分の未来を占うのもいい。一人大富豪で多重人格の練習もした。スピードで最速タイムを刻むのもよかろう。いつかカジノで勝てるように、ブラックジャックの練習をするのもいい。トランプとは誰だって友達だ。

 

学校に初めてトランプを持ってきたのは、巨人のM君だったか。雨の日になると、校庭で遊べないからなにか遊びを持ってこようと誰かが提案した。トランプや、UNO、花札が集まり。トランプがメジャーになった。トランプは、教室全体で流行り始めた。学校に何も持ってきては行けないのか?問題の始まりはそこだ。エロ本はダメだ。ゲーム、だめだ。学校は学ぶ場だからゲームはふさわしくないと言われる。取り上げられた。カードゲーム、遊戯王などはダメであった。誰もが隠れるようにプレイしていた。バレたら反省文。あるいは親の召喚。じゃあ、トランプは?

 

先生たちの間でも微妙であったろう。授業中にトランプで遊べるわけでもない。また、雨の日に校庭で走り回れない。廊下で野球やサッカーをされて、窓ガラスを割られるのも困る。廊下は走ったり、暴れたりも辞めてほしい。そんな心境からか、紆余曲折でトランプで遊べるようになった。

 

人数が多いと、トランプの幅は広がる。ババ抜き、七並べ。誰もが知ってる遊びだ。その中で私達が熱中したのは大富豪だった。大富豪のルールは、ローカルありありのなんでもありだった。都落ちもあり。都落ちとは、1位になった人が次のゲームで1位になれなかった場合、自動的に最下位に落ちる仕組みだ。ゲームの始まる前に、前回のゲームで最下位だった人は、1位だった人間に強いカードを2枚奪われる。最下位は代わりに1位のいらないカードを2枚受け取る。最初のゲーム以降は、常に不公平なゲームである。だからこそ面白かった。

 

1位が圧倒的な力でゲームを連勝し続けることもある。もちろん恨みを買う。なんとしても、ひきずりおとそうと団結する。お互いのカードを晒すのはアウトだ。ずるはダメ。団結が上手くいくこともあれば、裏切り者が出ることもある。実力と、何をいつ出すかはもちろんのこと。駆け引きと、運の要素も大事だった。場に出たカードから、誰が何を持っているかまで推測もする。そこまでやっても革命でどんでん返し。プランがぱぁになることもある。トランプの中で最も好きな遊びだ。女の子も男の子も好きなだけ参加できたしね。人数が多すぎると、大富豪の魅力は少し薄れてしまうのが難点だ。複数枚同時出し、階段、色縛り、数字ごとの追加効果など、戦略の要が薄れてしまうか。


大乱闘

大乱闘は大乱闘でも、ケンカではない。まてよ、ケンカの話でもいいかも知れない。殴り合い、引っ張りあいは学校のどこかで毎日のように起きていた。起こすこともあった。どれも他愛のない理由だった。だれかのいたずらしたら、ひどいしっぺ返しを食らっただけとか。どっちが強いか張り合ったりとか。僕は体が小さいが、狂犬だった。恐怖のネジがぶっ壊れていたから、ケンカをあまり売られなかった。噛み付いてくるわ、金的への攻撃を躊躇わないわ。勝てば官軍なのだ。例え相手を僕が打ち負かしても、なぜか涙が出てくる泣き虫だった。打算かも。泣けばたいてい有耶無耶になる。先生もめんどくさがる。


大乱闘スマッシュブラザーズ。初めての大乱闘はニンテンドー64であった。ほとんどを一人プレイで過ごした。家に友達を呼びたくなかったんだ。なんでわざわざ友達が来てから、母に64を隠し場所から出してもらわなならん?それに実際に出してもらえるかも母の機嫌による。それはとても嫌なことだった。頼んでも出してもらえるかは運だ。それに母が友達にいらん質問をするのが本当に嫌だった。親は何の仕事をしているの?今でも嫌な質問の1つだ。

 

家に呼ばない他の理由には、嘘をつきまくって我が家がとんでもない動物園になってたのもある。家にはライオンや象やキリンがいるとか。どこの石油王だ。呼べばバレるわな。こんな意味もない嘘をよくついていた。低学年特有の見栄っ張りだ。

 

3,4年生あたりだったか。任天堂から満を持して、ゲームキューブという傑作ハードが発売される。このコントローラーはいまだに持っている。頑丈だし、使いやすい。思い出である。今でも世界中でも愛されているコントローラーらしいよ。大乱闘スマッシュブラザーズDXが満を持して登場。ただ僕は持っていなかった。買ってもらえなかったからね。

 

やがて疎遠になる近くのO君や、おもちゃ箱ことA君家に遊びに行っては一日中対戦をしたものだ。やたらうまかった。自分でもなぜそんなにうまかったのかわからない。周りが下手なだけだったのかも知れない。圧倒的な差があった。チーム戦で僕1人vs友達3人でもボコボコにするくらいの力量差があった。以下にして相手をなぶり殺すかだけを考えていた。常に1位だ。

 

あんなにハマったゲームは他にないかも知れない。ほぼ全てのキャラをほぼ十全にあつ仕えるような気持ちだった。高難度コンテンツも当然クリアした。マリオパーティは難易度ノーマルにすら勝てなかったのに不思議なもんだ。大乱闘スマッシュブラザーズDXほど適正を示したゲームには出会ったことがない。強いて言えばテトリスかな。

 

家から締め出される

門限があった。5時だったか。門限を過ぎると家の鍵を閉められる。家には入れなくなる。インターホンをいくら押しても、ドアをばんばか叩いても反応は帰ってこない。近所迷惑この上ない騒音が響き渡る。何回あったかわからないほど締め出された。

 

遊びに集中し始めると時間なんてものを気にする注意力なんてない。ゾーンに入っているのだ。僕自身も学ばない。何度閉めだされても、門限を守ることは少なかった。 もっと遊びたい。もっとだ。

 

初めて閉めだされた日のことはいつだったか。泣きじゃくって、ドアを叩いてあやまりまくったろう。開けてくれなかったけどね。母の頭のねじは、人を害することに喜びを感じているんじゃないかと思う。俺が頑丈で良かったな。やがてこっちとしても、あ、これ門限に絶対間に合わないな。そうわかったら、飯抜きにされて鍵をかけらるんだから、もう帰らなくていいや。そういう思考にシフトしていく。友人の家に遅くまで入り浸ることになる。友達の家によっては、夕飯をごちそうになることもあった。ありがとうございます。素晴らしい、最高である。おもちゃ箱のA君家でなんど夕食をごちそうになったかわからない。もはやA君の家にずっといればいいんじゃね?とか本気で考えていた。最も寝るために、明日の学校のためには家に帰らなくてはならない。

 

帰途にたち、家についた。インターホンを押してもだれも反応しない。ドアも開かない。頭おかしいやつしか住んでないな?まだ起きてるだろ。夜7時か8時だぞ。姉も反抗して締め出されていたことがある。助けなかったしっぺ返しか…。何回か助けたけどね。

 

母は締め出せば、門限を守るようになると考えてたから本気で何も考えてない。事実を観察して、対策を変更するならまだしも、罰を与えることが目的なっちゃおしまいだよね。教育だから何をしても許されると本気考える人間だ。ナチスの才能がある。思い込みの強さ。

 

やがて締め出されてからは、この一見不可能そうな難題をいかに解くか、と遊びはじめる。1つ目は、1階にある父の部屋の鍵を予め開けておく。そうすれば庭のフェンスを超えて家に入ることができる。もっともこれは直ぐにバレて対策を取られた。2つ目は、2階の父の部屋の鍵を開けておく。庭には倉庫があり、倉庫の屋根を伝って、2回のベランダに登る。大成功。やはりバレて鍵を閉められる。この2階のベランダから、家に侵入する経路は父もやったことがある。母と父がひどいケンカをして、母が父がかえってくる前に鍵を閉めた。父は締め出された。ケンカは日常茶飯事だったけど、彼が締め出さしたのは少ないね。

 

玄関の鍵は3つある。2つは鍵で開けることができるけど、残りの1つは家の内部からしかかけることできず、外からの解除は一見不可能だ。まぁ、僕は解除したけど。それが3つ目だ。3つ目は、靴の紐を使ったロックの解除だ。古い家だと、割と悪用できる。

 

僕と姉は鍵っ子だった。小学校に入ってからは、両親ともに働いていたから3時頃に家に帰っても、いつも一人だ。家にランドセルをおいて、すぐ家を出る。家にはどこどこの家に行ってくるとメモをおいて。門限をぶっちぎり、3つの鍵を閉められる。2つは鍵で開けられても。U字ロックの内鍵だけは家鍵じゃどうしようもならない。父の部屋の鍵もしまってる。困ったなぁ。外寒いし。そろそろ入りたい。冬だろうと容赦なかったからね。

 

内鍵の仕組みを考える。こいつさえ抜ければフリーパスなんだ。この内鍵を何とか横に倒せればいいわけだ。出っ張りに引っかからなくなる。どうやって横に倒すか考えれば扉は開くわけだ。!。内鍵に紐かなんかを縛りつける。ドアを閉める。つけた紐を引っ張れば横に倒れてくれるんじゃないかと思いついた。紐、ひも…、あぁ靴紐がある。試す。数分後、案外簡単に仕事は終わった。かじかむ手で内鍵の先端部分に紐を上手く縛ること。これだけが難点だった。縛ったあとはドアを閉め、強く引っ張るだけ。こうして、母の無駄な外への締め出し文化は科学と知性に敗北する。ばっかねー。

 

A君の帰還

おもちゃ箱のA君。2年生辺りで転校してしまった。そのA君はどうやら帰ってきた。いやー、目出度い。再会を機に彼の家には狂ったように遊びに行くことになる。母は僕にA君を紹介したけど、A君の家が私にとって悪影響をもたらすとやがて考えるようになる。ゲームは人を馬鹿にするやら。友達を選べやら。A君と遊ぶなと何度言われたことか。知らんでか。自分の友人くらいは自分で選ばせてくれや。家では操り人形であったから、その程度の反抗心は持っていた。

 

なかよしグループ

学校には週一度か、月に一度か。仲良しグループなる遊びの時間があった。各学年から一人か二人ずつ集めて、グループを作る。その中で何か遊ばせる仕組みだ。自分が高学年のときにリーダーとして動く必要があったんだけど、やったことがあったっけ…。やらないはずないけどな。記憶にないってことはサボってる可能性もある。学校のどっかでぐーすか寝てたかもしれない。

 

スイミングスクール

3,4年生のころは喘息がひどかった。父は喘息への対策として、スイミングスクールに通わせるようになった。楽しかった。体を動かすことは好きだ。スクールはセントラルという名前だ。

 

セントラルはテストに合格するとバッジを貰える。そのバッジをみなが自分のかばんにつけることが推奨されていた。かばんを見ればどのくらい泳げるかわかる仕組みだ。一番上は群青色にサメだったかな?そのレベルはかなり少なかった。たまに見るとすげー!と尊敬の眼差し。

 

最初の難易度は水に入るからはじまる。水に潜るレベルの黄色バッジ。バタ足、クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ。そして総合タイムトライアルの順番に難易度が上がっていく。僕はバタフライコースを超えたけど、タイムトライアルコースに入る前に辞めてしまった。一通り泳げるようになったし、喘息は治った。なぜ辞めたのかは覚えてない。金の事情か?飽きたか?

 

一番好きな泳ぎは平泳ぎだ。疲れずに長くのんびり泳げるところが気に入っている。逆にバタフライは苦手だな。まるで溺れているかのようにジタバタするし、疲れる。のんびりさせてくれ。

 

ある日のこと、突然バク宙がしたくなった。テレビかなんかに影響されたのだろう。プールは絶好の場所だ。頭から落ちても水だから、そんなに危なくないはず。少年は突如プールサイドにたった。ジャンプする。頭のイメージ通りに体を後ろにひねる。頭を下に向ける。プールサイドに激突。死ぬほど痛かった。

 

初めてで上手くいくはずもなく、痛む頭を抱えうごごごごとうずくまった。こういった衝動に身を任せた行動と迷いのなさはどこにいってしまったんだろうか。楽観主義が減り、悲観主義が表に強く出ている。バク宙ができるようになったのは、高校生だったな。暇すぎて練習した。

 

プールが終わると、大体父が迎えに来てくれていた気がする。母のときもある。練習帰りに自販機で食べるセブンティーンアイスの巨峰味がいっつも楽しみだった。バニラ&ソーダや季節限定味に浮気しながら、結局巨峰味に戻るのだ。あの頃は110円だった。いまは160円?物価はやっぱり上がってる。給料はあまり上がってないし、むしろ下がってるみたいだ。

 

セブンティーンアイスの苦い思い出がある。外側の紙を向いたら、表面の硬い紙だけが剥がれて、内側の薄い紙がアイスに張り付いたままだ。食べられそうにない、ショックだったなぁ。かぶりついてもザラザラした紙の味。頑張って剥がそうにも剥がれない。悲し出来事だった。