左利きとはさみ

危機利き手


右利きだあろうか。左利きだろうか。
両手で万全に何でもできる方もいるだろうか。
私は、ものによって左手だったり右手だったりする。


ペンを書くのは右手でだが、箸は左だ。ハサミも左。歯ブラシも左。左利きかもしれない。ペンだけ書道の弊害で突然変異しただけで。日本の矯正文化が最近消滅して、潰されていた個性が受け入れられる。それは左利きの人にも大いに助けになる。
でもボールを投げたり、殴ったりするのは右。理由は知らない。もともと全部左手だったっけえ?右手の小指をドッジボールで折ってしまって、仕方なく左手を使うようになった時期のせいで左偏重になったのだっけ?単純に両利きだとかっこいい!と考えてた時期もある。左手が利き手だと、天才型だ!という言葉にのせられたことも在る。現状の事実を述べるなら、奇妙な状況になってることは間違いない。
困ってるわけでもないから、矯正する気もない。

 

 

ハサミはやる

ただ、ハサミ。ハサミだけはけっこう困る。ハサミを使うときは左手でハサミをもつ、右手で切りたいものを持つ。切りにくい。すごい切れない。ある程度切れ味のいいハサミじゃないと、うまく切断されない。ハサミは基本的に右手用に作られている。左手用のハサミも一応存在するが、ハサミ界隈での暗黙の了解は、右手至上主義。これによって一番困るのは、ハサミは根本だと切りやすい。先端だと切りにくい。これはハサミを閉じるにつれて、刃間の角度が徐々に少なくなっていくからだ。大きく開いてるほうが、より小さな力でものを切れる。角度が狭くなると、切るためにより強い力がいる。テコの原理だ。最近では、切っている間も常に30℃の角度が保証されるハサミもある。刃がカーブを描くことで均一な力で切れる。切った時の切れ味も良くなるのだと。体感もバチンと気持ちいい。実際に使ったことはない。科学的に切りやすい進化をしたハサミがあるってだけだ。


僕の身の回りのハサミは、刃が真っ直ぐな古い時代のハサミだった。右手用のハサミを左手で使うこと。そして直刃のハサミ。この2つが揃うとわりとひどいことになる。特にひどかったのは、家庭科の授業。服の裁断だ。古着をもってきて、リサイクル。新しい想像と独創的に満ちた普段着を作ろう。そんな内容だった気がする。そこで作った服を次の日来てきた生徒はいなかったと思う。その日の萌えるゴミがやたら膨らんでいたのは覚えている。女子は持って帰ってた。変態はどこにでもいるからな。


ハサミがなぜものを切るか知っているか?俺も今さっきに知ったのだが、刃の鋭さで包丁のように切っているわけではない。ハサミについてる2つの刃が閉じるとは、2つの板の密着度により点の破壊が起こる。点の破壊が連続して線になり、結果切れる。ハサミの刃をなぞっても、別に出血はしないだろう。わざわざ研ぎでもしない限り。研げば木だって肉を切り裂く。包丁を指でこすると下手すると神経切断でやばいから試すな。だから、ハサミってのは科学的に結構難しい説明をあのシンプルな構造で成し遂げている。刃の鋭さで切ってるわけじゃないのだ。すごいやつだ。というかこんな説明をせずとも、布はハサミで切りにくい。紙はきりやすい。それだけのことが言いたかった。ふにゃふにゃは破壊されにくい。


布を裁ち切るときは、左手で右利きのハサミを使わないほうがいい。まるで切れない。一応切れる。切れることには切れる。より正確に説明するなら、他の人の10倍の時間は本当にかかる。なんなら左利きだろうと、右手で不慣れにハサミを扱ったほうが早く来れる。そのくらい不条理だ。

 

左利きは日々適応している

あなたが右利きで、右利き社会において何不自由しない生活を送っていたなら、それは大変幸いである。私も完全なレフトハンダ―ではないため、ある程度恩恵を受けてきた。ドアの取ってだって右回りだし、トイレの洗浄ノブも向かって右側についている。マウスだって、基本的に右利きように作られている。なんなら包丁だって、刃の方向は右利きのために最適化されている。左利きは圧倒的なマイノリティなのだ。もし左利きのひとが困っていたら少し助けてあげてほしい。自分には理解できない困り方をしていたら、実際に自分の左手でやってみてほしい。具体的にはハサミを左手で使うとか。